あけましておめでとうございます。
もはやHTMLなど過去の産物になるのではないかというような噂を耳にしつつ、今だに化石のような自作サイトで細々とやっております。
本年もよろしくお願いします。
素材やテンプレートをお借りした先すらもはや存在せずクレジット表記が異議をなしておりません。
なかなか趣深い初夢をみてツイノベでちょっとリメイクして書き連ねていたので、こちらにも掲載しておきます。
初夢を人に語ると叶わないらしいので、今のうちにフラグを折っておきましょう。正夢になったら困るからね
続きをよむからどうぞ。
彼と幼馴染だったのは昔の話。長らく疎遠で、顔を見るまでは思い出しもしない程度の関係だった。
しかし、お互い悪しからず思っていたのだと思う。目があった時、場違いなパーティでようやく話しかける人を見つけたような安心感を感じたのだから。
向こうもホッとしたような顔で頬を緩ませた。
近くに寄って話したい、と思った。肩を叩いて互いの近況について軽く世間話でも。その時の私は、人との繋がりを失して等しい生活の中で、過去の幻影だったとしても目の前の絆らしきものに縋りたかったのだと思う。
あまりに馬鹿げた願いだった。何しろ私は彼を撃ちに来たのだから。
射撃ポイントの下見中だった。対象まで射線が通るか手すりから演台を見下ろした時、リハーサル中の彼もそこにいたのだ。
何という失態だろう。ターゲットに見つかるとは。
おそらく彼は、わたしがここにいる意味に気づいただろう。
言っておくが、私がそこにいる言い訳自体はいくらでもできた。
照明スタッフとして雇われていたのだし、物珍しげに演台を覗き込んでいたスタッフは私だけではなかったろう。
不自然ではない。
だがそれは、証拠がない。それだけのこと。今日まで生き抜いてきたその人が、その直感を持ち合わせないはずはない。
バレている、と私は思った。思ったまま手順を続けた。
はたして彼もスケジュールの通り、打ち合わせの通り、続けたのである。
それは即ちこちらの暗殺計画の通りに、ということであった。
決定的瞬間の事を、今でも時折思い返す。その光景を、ではなくその時の私の心の裡を、だ。
声をかけたいと思った。話がしたいと思った。有り体に言えば私は彼に親しみを感じた。仲良くしたかったのだ。
そう思いながら、引き金を引いた。同時に何か事故が起こって暗殺計画が失敗する事を願った。
可笑しな話だ。だって計画を成功させたのは他ならぬ私なのだから。
躊躇いながら撃ったわけではない。躊躇ったのは撃つ前までだ。躊躇いが指を固めてしまう事を恐れて、殊更性急に引き金を引いたような気すらする。
そこから先は、我ながら感心するほどに仕事人の動きだった。
一射目、防弾ベストに阻まれたとみえた。半拍遅れてホールに響く銃声。彼の体が反動で大きく跳ね、椅子から落ちた。
致命傷ではない、と判断すると同時に二射目を構える。銃声を聞いてからさらに一呼吸おいて動き出す有象無象。
射線が塞がれた。手すりに足をかけ身を乗り出す。ベストを避け、撃つ。
誓って、彼と親しくしたいと思っていたのは嘘ではない。生きていて欲しかった。計画など失敗すれば良いと思っていたことも嘘ではない。
獣の本能にも似た、体に染み付いた一連の動きだった。敵を捕捉し攻撃する、反射と動作。私の意思や思考など関係がない。
彼の生死を分けるのは自分の振る舞いなのだという認識が、スッパリと抜け落ちていた。だって、そういう仕事だったのだ。私はそれを受け、確かにすると約束した。そして確かにした。
間違いではなかった、だが。
後悔はしていない、しかし。
他の選択肢などなかった、それでも。
後に入る言葉は何だろう
その答えを、見つけられない。今だに反芻してしまう。そして考える。
私は撃つ瞬間、彼を思ってはいなかった。単なる動作する道具だった。しかし、彼は撃たれた瞬間、私のことを考えたろうか、と。
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彼と幼馴染だったのは昔の話。長らく疎遠で、顔を見るまでは思い出しもしない程度の関係だった。
しかし、お互い悪しからず思っていたのだと思う。目があった時、場違いなパーティでようやく話しかける人を見つけたような安心感を感じたのだから。
向こうもホッとしたような顔で頬を緩ませた。
近くに寄って話したい、と思った。肩を叩いて互いの近況について軽く世間話でも。その時の私は、人との繋がりを失して等しい生活の中で、過去の幻影だったとしても目の前の絆らしきものに縋りたかったのだと思う。
あまりに馬鹿げた願いだった。何しろ私は彼を撃ちに来たのだから。
射撃ポイントの下見中だった。対象まで射線が通るか手すりから演台を見下ろした時、リハーサル中の彼もそこにいたのだ。
何という失態だろう。ターゲットに見つかるとは。
おそらく彼は、わたしがここにいる意味に気づいただろう。
言っておくが、私がそこにいる言い訳自体はいくらでもできた。
照明スタッフとして雇われていたのだし、物珍しげに演台を覗き込んでいたスタッフは私だけではなかったろう。
不自然ではない。
だがそれは、証拠がない。それだけのこと。今日まで生き抜いてきたその人が、その直感を持ち合わせないはずはない。
バレている、と私は思った。思ったまま手順を続けた。
はたして彼もスケジュールの通り、打ち合わせの通り、続けたのである。
それは即ちこちらの暗殺計画の通りに、ということであった。
決定的瞬間の事を、今でも時折思い返す。その光景を、ではなくその時の私の心の裡を、だ。
声をかけたいと思った。話がしたいと思った。有り体に言えば私は彼に親しみを感じた。仲良くしたかったのだ。
そう思いながら、引き金を引いた。同時に何か事故が起こって暗殺計画が失敗する事を願った。
可笑しな話だ。だって計画を成功させたのは他ならぬ私なのだから。
躊躇いながら撃ったわけではない。躊躇ったのは撃つ前までだ。躊躇いが指を固めてしまう事を恐れて、殊更性急に引き金を引いたような気すらする。
そこから先は、我ながら感心するほどに仕事人の動きだった。
一射目、防弾ベストに阻まれたとみえた。半拍遅れてホールに響く銃声。彼の体が反動で大きく跳ね、椅子から落ちた。
致命傷ではない、と判断すると同時に二射目を構える。銃声を聞いてからさらに一呼吸おいて動き出す有象無象。
射線が塞がれた。手すりに足をかけ身を乗り出す。ベストを避け、撃つ。
誓って、彼と親しくしたいと思っていたのは嘘ではない。生きていて欲しかった。計画など失敗すれば良いと思っていたことも嘘ではない。
獣の本能にも似た、体に染み付いた一連の動きだった。敵を捕捉し攻撃する、反射と動作。私の意思や思考など関係がない。
彼の生死を分けるのは自分の振る舞いなのだという認識が、スッパリと抜け落ちていた。だって、そういう仕事だったのだ。私はそれを受け、確かにすると約束した。そして確かにした。
間違いではなかった、だが。
後悔はしていない、しかし。
他の選択肢などなかった、それでも。
後に入る言葉は何だろう
その答えを、見つけられない。今だに反芻してしまう。そして考える。
私は撃つ瞬間、彼を思ってはいなかった。単なる動作する道具だった。しかし、彼は撃たれた瞬間、私のことを考えたろうか、と。
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